この時期、パッチテストによる偽(?)陽性(または刺激反応?)率が高まる。歯科金属アレルギーに原因を求めて、パッチテストを試み、ほとんど全てに反応してしまい、「セラミックかチタンでなければだめでしょう」と、歯医者さんに言われたりする。
多数の、う歯(虫歯)が関係していたとしか考えようのないアトピー性皮膚炎の悪化症例を経験したことがあるので(病巣感染といって、慢性の炎症が体のどこかにあると、皮膚炎が悪化することがある)、歯科の関与も決して無視はできないが、歯科業界も過当競争ぎみなのか、ときに「アトピービジネス」もどきの歯医者さんもいるので、話を鵜呑みにはしないほうがよいと思う。
単なる皮膚の過敏性亢進による金属アレルゲンパッチテスト偽(?)陽性(または刺激反応)であれば、歯科金属を除去しても直ちに良くはならない。「半年待ちましょう」といわれることが多いが、この時期のパッチテストの結果に従って、歯科金属を除去して半年間セメントを詰めていた人と、そうしなかった人(するかしないかは患者の自由意志にまかせた)とを経過観察した限りにおいては、さほど差はなかった(どちらも離脱が進んでそれなりに良くなった)。
前章の「見えない悪化因子」で、私は、環境因子に重点を置いて記したが、それは、患者の話を聞いていて、「引越しや転地をして良くなったり悪くなったりした」というのが多かったので、何が要因だろうか?と疑問に思って、調査を始めたのが発端で、いろいろなことを知った。食物アレルギーが悪化因子であると考えられた事例も聞き取りで多かった。
しかし、歯科金属の場合、「歯の治療を、たまたましたら、劇的に良くなった、または悪くなった」という話は、あまり患者の話からは出てこなかった。それで、仮に悪化因子であるとしても頻度的には低いと思う。
しかし、アトピー性皮膚炎以外の皮膚疾患で、たとえば、歯列矯正を始めて、掌せき膿疱症が急に悪化したなどの話はよくあるので、歯と皮膚は関連してはいる。
とにかく、白色ワセリンが外用できる程度に皮膚が回復してきた時期には、早く治そうと焦って、色々なことを試みるが、この時期のパッチテストの結果を根拠として、高額な歯科治療に踏み切るのは、少し待ったほうがよいように思う。
むしろ、「過去に歯科治療を受けたあとで悪化した」とかといった、その人特有の履歴があれば、そのほうがパッチテストの結果よりも「当たり」である可能性が高いように思う。
金銭的に余裕のある人が、「この機会に歯も良いと思われるものに変えておこう」というのであれば、それはぜんぜん異論はない。過敏性が亢進しているということは、元来がその人に合わないものが強調されている時期とも考えられるからだ。
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